*ヒロインはソルジャー
「クラウド、照れてるの?それとも酔ってるの?」
「・・・・・・」
赤いような青いような顔をした(でもやっぱり顔立ちは綺麗だった)その青年の頭は今、
私の膝の上に。潜水艦の中で必死に何とか吐かないようにしてる。一般兵のマスクを
取って、それを強く掻き抱いてる。何だか猫みたい。船酔いがかわいそうなんだけど、
でもすごく今、わたし、この子のこと可愛いって思ってる。
「ねえ、やっぱりセフィロスに言って一回外の空気吸わせてもらおうか。今ならまだ間に
合うよ」
「・・・いい」
「なんで。ウータイまではすごく遠いよ。今逃しちゃったら、当分ずっとこの潜水艦の中に
いなくちゃならなくなるんだよ」
「・・・こうしていればなおるから、いい」
強情っぱりなところはセフィロスとすごくよく似てると思う。彼も犬というより猫って感じが
するしね。高級そうな猫。そんなことを言ったら正宗で斬り殺されちゃうかもしれないけ
ど。
「やっぱり、俺、ちょっと走ってくる」
「何言ってるの、そんな青い顔してさあ!」
私の言う事も聞かずに、クラウドはどこかへ行ってしまった。
数分後、走れば少しは気分が回復したのか顔色は良かったけど、それでも私の膝あた
りをじっと見てくるあたり、相当彼は膝枕が気に入ったらしい。
やっぱり、クラウドって可愛い。
変な口癖の人だなぁと最初は思った。あとは、何てかっこつけなんだろう、とも。私とは
あまり合わなさそうなタイプの人で、私は彼よりもツォンさんやルードと喋っていた。
「いや、だからねイリーナ。あの人がそんなこと言うはずないと思うんだけど」
「だから先輩がそう言ったから、私がこうしてお遣いにきてるんです!」
レノ先輩がさんをお食事に誘いたい、と。イリーナは興奮気味にそう捲くし立てた。
でもまさかそんなはずは。いやいや、でも・・・。
同じような会話がさっきから延々と続いている。でも、私はたとえイリーナの言っている
ことが本当だとしても、彼と食事に行くつもりは全くない。しかも何で自分から誘わない
んだろうか。そこで私の彼への不信感は高まるのだ。
「おい、イリーナ。誘うのにいつまでかかってるんだぞ、と」
「先輩!」
ご本人が登場。私はもっと居心地が悪くなる。そんな気も知らずか、イリーナは気を利
かしてかどっかへ行っちゃうし。彼は私の隣にどかっと乱暴に座る。
「で?俺をそんなに拒む理由は?」
「いや・・・そんなことはないですけど」
どうして私がこんな肩身の狭い思いをしているの?私はソルジャーなのに。
「ちなみにイリーナに頼んだわけは、俺は仕事がまだ残っていて、その間にに帰
られちゃ困るからだぞ、と」
「・・・でもレノさん、何で」
「特に理由はない。敢えて言うなら、俺がを気に入ったからだぞ、と」
「・・・・・・」
「それに、その呼び方も気に食わない」
何でルードは呼び捨てなのに俺はさん付けなのか。彼は忌々しそうにそう呟いた。
「タークスのレノと食事に行ったそうだな」
「ええ、行きましたとも」
「あと一般兵のクラウドとも最近仲がいいみたいじゃないか」
「・・・・・・」
セフィロスの嫌味攻撃は続く。仕事をさぼるな、とか夜にあまり出歩くな、とか。まるで親
みたいなのよね、セフィロスって。本当の親の顔なんて知らないけどさ。
「腕もなまってきてるんじゃないか?俺が特別に剣術の指導をしてやろうか」
「結構です。なまってません。私よりもザックスの相手をしてあげれば?」
私より後に入ってきたわけだし。そう付け加えてもセフィロスは「いや、ザックスはよくや
っている」と心にも思ってないことを口にする。
「いいわよ、じゃあ相手になってもらおうじゃないの。マテリア外して剣だけの真剣勝負
よ」
「クックック・・・それは面白い」
私の剣とセフィロスの正宗が何度も衝突する。持ち前のスピードを活かして彼の懐に入
る。長い剣は至近距離で戦うには不利なのだ。それに今はマテリアをつけていないから
魔法の心配もない。だけどセフィロスにだってスピードはある。あっさりと後ろに飛び退
いてしまい、剣で斬りつけようとする。
やばい・・・目がマジだ。
「うわあ、やっぱりマズイんじゃねえの?」
「いや・・・ザックス。俺に比べたらまだまだ」
「クラウド!?何だ、その傷・・・」
「・・・セフィロスにやられたんだよ。最近と仲がいいからっていきなり・・・」
「い、いきなり・・・?」
おいおい、じゃあタークスのレノもクラウドと同じ目に遭ったってのか・・・?セフィロスは
に本気で惚れてるからなあ。
これからは俺も気をつけよう、ザックスはそう固く心に誓ったのだった。